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ガレージ社長の雑記帳

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2012年 08月 21日

ガソリンの話・・・その2

今回の話は、コメントを頂いたartisanさんの疑問に私なりの見解で答えてみましょう。

素朴な疑問だと思いますが・・・

何故、日本車は『レギュラーガソリン』で、欧州車は『ハイオクガソリン』なのでしょうか?

調べてみると、「ガソリンのオクタン価の違いです。」と説明されている事が多いようです。
私も『要求オクタン価の違いです。』と書きました。

今回は、もう少し突っ込んでみましょう。

日本と欧州で販売されているガソリンの違いはご存知でしょうか?

日本では、『レギュラーガソリン』と『ハイオクガソリン』ですね。
日本の『レギュラーガソリン』のオクタン価は、[89]前後です。また、『ハイオクガソリン』のオクタン価は、[98]前後です。

これは、前記しました。

では、欧州で販売されているガソリンはどうでしょうか?

今回は、ドイツの場合でご紹介します。
ドイツで販売されているガソリンは、3種類です。
Bleifrei(無鉛ガソリン)=オクタン価[91]前後。
Bleifrei Super=オクタン価[95]前後。
Bleifrei Super Plus=オクタン価[98]前後。
この中で、『Bleifrei』というガソリンは、ドイツ国内で殆ど需要がないそうで(理由は不明)、ドイツで一番需要がある『Bleifrei Super』というガソリンが日本でいう『レギュラーガソリン』あたるという事になるそうです。
その為、ドイツ車(欧州車)メーカーは、この『Bleifrei Super』というガソリンを使用する事を前提に車を設計し、製造しています。

これで解りましたね。

日本車は、オクタン価[89]前後のガソリンを使用する事を前提に設計&製造され、ドイツ車(欧州車)は、オクタン価[95]前後のガソリンを使用する事を前提に設計&製造されています。

ドイツ車(欧州車)を日本で使用する時に使用するガソリンは、当然、『ハイオクガソリン』となる訳です。

そうなると・・・何故、日本とドイツ(欧州)で販売されているガソリンのオクタン価が違うのか?という疑問が湧いてきます。

簡単に言えば、国の工業規格の違いという事になるでしょう。
日本のガソリンは、[JIS]という工業規格の[K2202]で成分やオクタン価の規定があり、その中に「1号ガソリン(ハイオクガソリン)のオクタン価は[96]以上、2号ガソリン(レギュラーガソリン)のオクタン価は[89]以上」と決められています。(1986年改正)
ドイツでは[DIN]という工業規格で成分とオクタン価が決められています。
ガソリンの規格は、国によって違うという事ですね。
そして、各国のカーメーカーは、自国のレギュラーガソリン(一番需要の多いガソリン)に合わせて車を造っているという事です。

『日本人には、日本食が合う』といった所でしょうか?(チョット違うか???)

では、日本車と欧州車とではエンジンの構造上どのような違いがあるのでしょうか?

一番大きな違いは、『冷却』という事になると思います。

『ノッキング』は、混合気が圧縮段階でシリンダー壁に押し付けられ、高温・高圧状態になり自然着火してしまう現象です。

エンジンやガソリンの冷却を高め、シリンダー壁面やガソリンの温度を下げれば、圧縮中の混合気は着火点に達する事がなくなり、『ノッキング』を起こしにくくなります。

この『エンジンの冷却性能』が、日本車の方が優れています。

具体的には、ラジエターの容量・表面積が大きい、冷却水の量が多い、サーモスタットの開弁温度が低い、電動ファン(ラジエター付近に付いている電動の強制ファン)の作動温度が低い、などが挙げられます。

1990年頃の[トヨタ・カローラ/1500cc]で冷却水の総量は8リットル程でしたが、[VW・GOLFⅡ/1800cc]では冷却水の総量が6.5リットル程でした。

また、日本車の燃料ポンプ(燃料をエンジンへ送る電動ポンプ)は燃料タンク内にあり、燃料に浸っています。これで燃料ポンプの加熱を防ぎ、ガソリンの加熱を防ぎます。
欧州車は、車の外のフロアー部分に燃料ポンプがある為、道路の熱をまともに受けてしまいます。その為、燃料ポンプは加熱し、ガソリンの温度も上昇します。燃料ポンプは、内部をガソリンが通ることで潤滑をしていますので、ガソリンの温度が上昇すると内部の潤滑が悪くなり燃料ポンプの性能が下がります。燃料ポンプの性能が下がるとガソリンの流量が少なくなりますから、更なるガソリンの加熱、燃料ポンプの性能の低下に繋がり、『ノッキング』し易くなりエンジン性能は低下します。

加えて、日本車のエンジンルームの形状は、電動ファンの風が効率良く抜けるようにも設計されています。
欧州車のエンジンルームは、車が動いている状態が基本なので、走行中、車の前面から空気が入ると車の下側へ空気が流れ出る形状になっていて、車が動かない状態では空気の流れが出来にくく、エンジンルームの温度が上がってしまいます。エンジンルームの温度が上がると、当然、『ノッキング』を起こしやすくなります。
欧州車が、日本でオーバーヒートし易いといわれる所以です。

しかし、上記のような内容は、1990年代前半までの事で、1990年代後半の車からは欧州車も改善され、冷却性能は日本車と変らなくなっています。加えて、エンジンマネージメントの電子制御化が進み、高圧縮や希薄燃焼でも『ノッキング』を起こさず、エンジン性能を上げています。(FSIなどですね)

それでも日本車は『レギュラーガソリン』、欧州車は『ハイオクガソリン』というのは、『日本車は、オクタン価[89]前後のガソリンを使用する事を前提に設計&製造され、ドイツ車(欧州車)は、オクタン価[95]前後のガソリンを使用する事を前提に設計&製造されている。』という事が大きな要因だと思います。

お解り頂けるでしょうか?

今回、細かな電子制御部分までの説明は、専門的な難しい話になるので書きません。「どうしても知りたい。」という方は、H・Pの『お問い合わせ』から質問をお願いします。

次回もガソリンの話を書いてみたいと思います。

「まだ何かあるの?」と言われそうですが、そんな事は気にせずに書きますよ。

by gas-tuti | 2012-08-21 22:11 | 整備


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